第22回 浜松医科大学 同窓会 松門会 学術奨励賞 受賞論文要旨

非小細胞肺がんにおける PD-L1、PD-L2 遺伝子コピー数増加の臨床的意義

Clinical significance of PD-L1 and PD-L2 copy number gains in non-small-cell lung cancer.

Oncotarget 7: 32113-32128, 2016.

井上  裕介氏  (本学大学院医学系研究科第34期生)  本学内科学第二講座

要旨

[はじめに]

   Programmed death-1( PD-1 )とそのリガンドである PD-L1、PD-L2 の相互作用を介した機構が、がん細胞の免疫逃避機構において重要である。 がん細胞の一部は PD-L1 を発現し、活性化 T 細胞を不活性化することで腫瘍免疫から逃避する。 腫瘍細胞上の PD-L1 発現が抗 PD-1 抗体の治療効果予測に有用ではあるが、その予測効果は不十分である。 また、非小細胞肺がんにおける PD-L1、PD-L2 遺伝子コピー数増加の頻度や意義は不明である。

[方法]
   非小細胞肺がん 654 例の原発巣の PD-L1、PD-L2 遺伝子コピー数を FISH法で、タンパク質発現を IHC 法で評価した。 また、132例の所属リンパ節転移巣の PD-L1 プロファイルを評価し、原発巣との一致性を評価した。

[結果]
   PD-L1 遺伝子増幅は 3.1%、ポリソミーは 13.2% に認められた。PD-L1 遺伝子コピー数は PD-L2、JAK2 遺伝子コピー数とよく一致した。 PD-L1、PD-L2 発現率それぞれ 30.7%、13.1% であった。PD-L1 遺伝子コピー数増加、タンパク質発現はともに男性、喫煙者、扁平上皮がん、進行病期と関連していた。 PD-L1 遺伝子コピー数増加は PD-L1 タンパク質高発現と関連があったが、PD-L2 遺伝子コピー数増加は PD-L2 発現と関連がなかった。 多変量ロジスティック回帰分析では、PD-L1 遺伝子コピー数増加は腫瘍間質への免疫細胞浸潤、EGFR 発現とともに PD-L1 発現と独立して関連していた。 原発巣と転移巣との間の評価では、遺伝子コピー数の方がタンパク質発現よりも均一性、再現性に優れていた。

[結論]
   非小細胞肺がんにおいて、PD-L1 遺伝子コピー数増加は PD-L1 発現の機序の一つである。PD-L1 遺伝子コピー数の評価は、PD-L1 発現と比較して、 より再現性に優れた評価方法である。