第23回 浜松医科大学 同窓会 松門会 学術奨励賞 受賞論文要旨
Activin Signaling による中枢神経再生
Robust axonal regeneration occurs in the injured CAST/Ei mouse CNS.
Neuron 86: 1215-1227, 2015
大村威夫 (医学科第17期生) 本学整形外科 助教
要旨
神経損傷を受けても再生が可能な末梢神経と異なり、中枢神経の神経再生は極めて困難である。 その理由として中枢神経では損傷後、神経細胞では再生に必要な神経再生関連因子が共発現せず、 外因性要素としてグリア細胞が神経再生阻害因子を産生し、軸索再生を抑制するからである。

末梢神経では、損傷を受けた神経細胞は勃起状態となり、のちに更なる損傷が加わると軸索再生が著しく促進する。 この現象は conditioning effect と呼ばれ、脊髄後索損傷モデルにおいても求心線維が脊髄内で再生することが確認されている。

我々は conditioning effect に着目し、遺伝的背景の最も異なる9種の近交系マウスを用い、in vitro、vivo における軸索再生能を比較検討を行い、 conditioning effect による microarray による遺伝子の網羅的解析にて軸索伸長と最も有意に相関する遺伝子群の解明を行った。

その結果、CAST/EiJ という近交系マウスが conditioning effect により脊髄損傷モデル、脳梗塞モデル、 視神経損傷モデルの三つの異なる中枢神経損傷モデル全てにおいて驚くほどの神経再生を有することを発見した。Microarray 法による網羅的遺伝子解析結果より、 Inhba という遺伝子が中枢神経下での軸索伸長と最も強い相関を示すことを解明した。 Inhba の転写物である Activin は TGF-β super family に属し、幹細胞においては神経新生において需要な役割を担うことが解明されている。 中枢神経再生が可能な CAST/EiJ マウスの培養神経細胞に Activin Signaling 阻害剤を投与すると、 中枢神経環境下での軸索再生は有意に減少し、Activin Signaling の活性化の見られない C57BL/6J マウスの培養神経細胞に Activin タンパクを投与すると、 中枢神経環境下でも有意な軸索伸長が見られ、中枢神経再生における Activin Signaling の関与を解明した。