第13回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


メモリーCD8T細胞による樹状細胞を介した抗腫瘍免疫の増強

Helper funciton of memory CD8T cells: heterologous CD8T cells support the induction of therapeutic cancer immunity.
    Cancer Research.67: 10012-10018,2007

中村祐太郎氏  (医学科第14期生)    本学内科学  第二講座  助教

癌に対する標準治療の安全性および有効性は未だ限られている。従って生体の免疫系を用いて癌の拒絶を図る,安全で優れた腫瘍ワクチンの開発が切望されている。我々は癌に対する有効なワクチン投与法を開発するため,エフェクターCD8T細胞およびメモリーCD8T細胞の樹状細胞に及ぼす影響を検討した。

その結果エフェクターCD8T細胞は抗原を提示した樹状細胞を殺傷するのに対して,IFN-γ産生性のメモリーCD8Tはいわゆる「ヘルパー細胞」として働き,樹状細胞からのIL-12p70の産生能を増強した。これらの結果からメモリーCD8T細胞は,癌免疫に必須の強力な細胞性免疫の誘導を増強する可能性があることが判明した。

次にマウスの腫瘍モデルを用いて,腫瘍抗原を提示した樹状細胞ワクチン(DCワクチン)に,腫瘍抗原とは無関係な抗原を介したメモリータイプのCD8T細胞を作用させることによる抗腫瘍効果を検討した。その結果生体内においてもメモリーCD8T細胞は,IL-12依存性の細胞性免疫を強力に誘導し,これらを作用させていないコントロール群に比し有意に強い腫瘍縮小効果をきたした。

以上の結果からDCワクチンにメモリーCD8T細胞の補助的な効果を付加することにより,効果的な治療ワクチンの開発が可能になることが示唆された。またこの系は癌だけでなく感染症に対するワクチンにも応用が可能である。更に今回明らかとなった,免疫誘導においてCD8T細胞がその時期により抑制的,或いは補助的に働くことは,様々なワクチンのモデルを組み立てる上で極めて意義深い現象であると考えられた,