第8回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


ベクトルマッピング法による肺静脈内興奮様式の解析:心房細動治療への応用

Electrogram polarity reversal as an additonal indicator of breakthroughs from the left atrium to the pulmonary veins.
Yamane T. Shah DC, Jais P, Hocimi M,Deisenhofer I, Choi KJ, Macle L, Clementry J, Haissanguerre M. J Am Coll Cardiol 2002; 39:1337-1344.

山根禎一  (医学科第7期生)  東京慈恵会医科大学循環器内科  講師 


[背景と目的]     多くの発作性心房細動(AF)が肺静脈起源の異常興奮により惹起されることが1998年のHaissaguerre らの報告で明らかとなって以来、心房細動の治療法は激変している。異常興奮出現部位を標的とした治療から始まり、現在の主流は肺静脈を左房から電気的に隔離する方法(肺静脈隔離法)である。左房・肺静脈間は比較的限局した電気的交通部位( Breakthrough: BT)を介して伝導しているため、いかに効率良くBTを同定し焼灼するかが治療の鍵を握る。通常は肺静脈が受動的に興奮する際の最早期興奮部位をBTとして治療するが、正確性に問題が残る。本研究では、双極電位記録が興奮の時相のみならず方向性(ベクトル)の情報も有していることに注目し、BT同定におけるベクトルマッピング法(VM法)を提唱し有効性を検証した。

[方    法]     肺静脈が受動的に興奮する際にはBT部位から放射状に興奮が広がるため、肺静脈入口部円周上の双極電位記録はBT部位を境として極性反転現象を呈すると予想される。この仮説を、計113人のAF患者で検証した。さらに別の44人のAF患者において電位極性反転部位( Polarity Reversal: PR部位 )の選択的焼灼を行い(VM法)、その効果を前向きに検証した。

[結    果]     1)PRは解剖学的なBT存在部位の88%、非BT部位の9%で観察され( p <0.001 )、PRの有無からBTの存在を高い確率で(感度88%、特異度91%)予想可能であった。2)PR部位の選択的焼灼の有効性は非PR部位焼灼よりも有意に高かった(70% vs 17%, p<0.001)。3)全周性同時興奮を呈する難治性肺静脈においては、VM法を用いることで従来法よりも治療時間(各肺静脈の焼灼時間)が短縮された(12.3 vs 10.3min, p<0.01)。

[総    括]      VM法を用いることで肺静脈内の興奮進展様式をより正確に把握可能となり、BTの同定に有用であることが示された。