第23回学術奨励賞選考委員会委員長講評



理事・副学長    山本清二



浜松医科大学同窓会学術奨励賞は、現副学長の浦野教授のご発案で、平成7年に発足し、毎年公募されておりますので、今年で第23回目を迎えることになります。 浜松医科大学の発展のためには、同窓会員がさまざまな分野で活躍することが重要であると考え、同窓会員がおこなってきた優れた研究に対し学術奨励賞を授与し、 さらにその研究を発展させていただくことと、その研究者のモチベーションを高めることを目的として創設されました。

今年は6人の応募があり、論文6編が選考委員会により、公正に審査されました。 選考委員会は、学内の先生方から、北川雅俊教授、永田年教授、船井和仁准教授、乾直輝准教授、河崎秀陽准教授、同窓会からは、会長の梅村和夫学長特別補佐、 浦野哲盟副学長、杉本健准教授、それに教育担当理事の私が選考委員長として加わり、合計9名で構成されています。 審査会は、平成30年5月14日18:00から本学内で開催されました。 応募論文6編を、審査委員がそれぞれの専門分野に応じて分担して、事前に熟読し、審査委員会で内容を説明、論文およびその研究内容について議論して上で、 選考しました。

同窓会奨励賞の選考基準の原則は、1)本学発の優れた研究を優先する、2)海外や国内の他の施設の研究であっても、研究の継続性があれば良い、 3)いわゆる優れた臨床研究は意識して毎年1つ以上選考する、という3つであり、それに研究者自身の研究の継続性も考慮して選考されました。 応募された論文はいずれも優れた論文で、今年は例年以上に選考に苦慮しました。

審査の結果、浜松医科大学同窓会松門会学術奨励賞受賞者は、
   大村 威夫先生 (医学科第17期生  本学整形外科  助教)
   鏡    卓馬先生 (医学科第26期生  本学附属病院救急部  診療助教)
   千田 剛士先生 (大学院医学研究科第35期生  本学第二内科  医員)
   西本 幸司先生 (医学科第29期生  本学第二内科  大学院生)
の4人の先生方に決まりました。

大村威夫先生の研究は、2015年の Neuron に掲載されたもので、中枢神経の神経再生は極めて困難ですが、その理由として、 損傷後、神経細胞では再生に必要な神経再生関連因子が共発現せず、外因性要素としてグリア細胞が神経再生阻害因子を産生し軸索再生を抑制するからと考えられます。 大村先生らは、遺伝的背景の最も異なる9種の近交系マウスを用いて軸索再生能を比較検討し、  microarray による遺伝子の網羅的解析にて軸索伸張と最も有意に相関する遺伝子群の解析により、 中枢神経再生における Activin Signaling の関与を解明しました。 この成果は、大村先生が米国留学中の研究に基づくものですが、その優れた研究内容と共に、本学においても継続して優れた業績を出している点が合わせて高く評価されました。

鏡卓馬先生の研究は、2017年の Clinical Pharmacology and Therapeutics に掲載されたもので、 チェノピリジン系坑血小板薬とカリウムイオン競合型胃酸分泌抑制薬は、しばしば併用される薬剤ですが、 共に CYP(チトクローム P450) 群により代謝されます。 カリウムイオン競合型胃酸分泌抑制薬の併用がチェノピリジン系の坑血小板効果に与える影響は未知であり、 これをプロトンポンプ阻害薬の併用と比較し検討した研究です。 カリウムイオン競合型胃酸分泌抑制薬であるボノブラザン併用よるチェノピリジン系の坑血小板の減弱効果は、 プロトンポンプ阻害薬であるエソメプラゾール併用より有意に大きく、この薬物間相互作用には CYP が強く関与することを報告したものです。 チェノピリジン系坑血小板薬使用時の胃酸分泌抑制薬選択に際して、薬物間相互作用にも留意すべきであるという臨床上重要な問題を指摘した点が高く評価されました。

千田剛士先生の研究は、2017年の Hepatology に掲載されたもので、C型肝炎ウイルスの持続感染は慢性炎症、肝臓の線維化を引き起こしますが、 ウイルス感染に起因するウイルス感染に起因する肝線維化の分子機構は必ずしも十分に解明されていません。 千田先生らは、C型肝炎ウイルス感染に伴う肝特異的転写因子である CREBH 活性化を介した TGF-β2誘導の分子機構を明らかにしました。 更に、 CREBH および TGF-β2誘導が肝星細胞における線維化関連因子の発現誘導に重要な役割を果たしていることを示しました。 この他にも肝臓内科領域で優れた論文を多数発表している点と共に評価されたものです。