第24回 浜松医科大学 同窓会 松門会 学術奨励賞 受賞論文要旨
LTBP2 は肺筋線維芽細胞から分泌され、特発性肺線維症のバイオマーカーとなり得る

LTBP2 is secreted from lung myofibroblasts and is a poteniual biomarker for idiopathic pulmonary fibrosis.
Clinical Science 132: 1565-1580, 2018

榎本泰典 (大学院医学系研究科第36期生)

理化学研究所生命機能科学研究センター 呼吸器形成研究チーム 研究員
要旨
【目的】
肺の線維化における重要過程である線維芽細胞から αSMA 陽性筋線維芽細胞への分化を反映する、肺線維症のバイオマーカーを同定する。
【方法】
1)FACS を用いて、プレオマイシン誘導性肺線維症モデルマウス肺から筋線維芽細胞( CD49e+Sca-1-Lineage-)を、 未処置マウス肺から定常状態の線維芽細胞( PDGFRα+Lineage-)を単離する。マイクロアレイにより両細胞群における遺伝子発現を網羅的に比較する。
2)筋線維芽細胞に高発現している遺伝子群の中で、Act2(αSMA 遺伝子)とシグナル比が近似する遺伝子を同定する。 またこの発現が、ヒト肺由来線維芽細胞を用いた実験系においても再現されるか検証する。
3)同蛋白質の局在、産生源を推定する。
4)健常者および特発性肺線維症( IPF ) 患者血清で、同蛋白質の濃度を測定する。さらにその値と患者の臨床情報との関連性を評価する。
【結果】
1)2)
上記方法に基づき、遺伝子 Ltbp2 を同定した。in vitro でヒト肺線維芽細胞をTGF-β で刺激すると、ACTA2-mRNA の発現上昇と合わせて LTBP2-mRNA の発現も上昇していた。また培養上清中蛋白室濃度の比較から、TGF-β刺激を受けた筋線維芽細胞は多量の LTBP2 を細胞外に分泌することがわかった。
3)免疫染色の結果、正常肺では気管支・血管束周囲のみに LTBP2 を発現を認めた。一方 IPF 肺では線維化領域に多量のLTBP2 沈着を認めた。 また一部の筋線維芽細胞においても染色が確認された。血球、上皮、内皮等における発現は明かでなかった。
4)健常者と比較し IPF 群では、血清 LTBP2 濃度が有意に高値であった。 またその値は努力性肺活量と負の相関( r=-0.369) を示し、予後不良例、特に半年以内の急性憎悪発症例で高値であった。
【結論】
LTB2 は IPF の新規バイオマーカーとして期待される。