第23回 浜松医科大学 同窓会 松門会 学術奨励賞 受賞論文要旨
HCV感染に起因するCREBH関連TGF-β2誘導は肝星細胞での線維化応答に重要な役割を果たす
Critical role of CREBH-mediated induction of TGF(transforming growth factor)-β2
by hepatitis C virus infection in fibrogenic responses in hepatic stellate cells.
Hepatology 66: 1430-1443, 2017
千田剛士 (大学院医学系研究科第35期生) 本学第二内科 医員
要旨
C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染は慢性炎症、肝臓の線維化を引き起こすが、ウイルス感染に起因する肝線維化の分子機構は必ずしも十分に解明されていない。 本研究では、HCV 感染に伴う TGF-β発現亢進の分子機構、また HCV 感染細胞との共存下での肝星細胞の活性化、線維化促進の分子機構の解明を目的とした。

ヒト肝癌細胞株への HCV 感染および HCV タンパク質発現により TGF-β2の mRNA 上昇とプロモーター活性亢進が示された。 TGF-β2 プロモーター領域に肝特異的転写因子 CREBH の結合配列が存在することを見出し、CREBH が TGF-β2 プロモータに直接結合することを実験的に示した。 TGF-β2 プロモーター活性は CREBH のノックダウンにより減弱し、活性化 CREBH の強制発現により回復した。 また HCV 感染によって肝細胞内で活性化 CREBH レベルが上昇することを示した。 HCV 感染肝細胞、ヒト肝星細胞それぞれの単独培養に比べ、両細胞の共培養系ではコラーゲン及び TGF-β2 の発現が顕著に亢進していた。 共培養系におけるコラーゲンの誘導は肝細胞の TGF-β2 ノックダウンにより減弱し、TGF-β2 強制発現により回復した。 更に、HCV タンパク質発現による TGF-β2、線維化関連遺伝子の発現上昇は正常マウス肝臓では観察されるが、CREBH ノックアウトマウスでは見られなかった。 また、健常人に比べ HCV 感染者で血清 TGF-β2 濃度が有意に高いこと、 患者肝組織中の TGF-β2mRNA は HCV 感染時と比べて抗 HCV 治療によるウイルス排除後の方が低下傾向にあることを見出した。

本研究により HCV 感染に伴う CREBH 活性化を介した TGF-β2 誘導の分子機構を明らかにした。 更に、CREBH および TGF-β2 が肝星細胞における線維化関連因子の発現誘導に重要な役割を果たしていることを示した。